過眠症
過眠とは、日中に注意を保持した覚醒状態を保持することが困難となり、うとうとしたり実際に眠り込んだりする状態のことを言います。
そのうち、3ヶ月以上にわたって日中の眠気が持続して、注意集中困難や身体的不調、仕事や学業における生産性低下などが生じるようになると、医療的治療の対象となり、過眠症となります。
過眠を呈する人は多いにもかかわらず、社会的な認知が不十分かつ、周囲も本人も「気がたるんでいるからだ」など精神論で片付けてしまうため、早期診断・早期治療が遅れ易いです。眠気が強い場合はまず夜間睡眠を規則的にキチンと確保するよう努力し、医療機関を早めに受診することが必要になります。
過眠症の診断には客観的な睡眠ポリグラフ検査が用いられますが、患者自身が主観的に判断を行う方法もあります。診断には下記のエップワース眠気尺度が用いられます。
<昼間の眠気の自己評価>
眠くなることはめったにない | 時々眠くなる | 眠くなることが多い | いつも眠くなる | |
1.座って読書をしているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
2.テレビを見ているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
3.人の大勢いる場所でじっと座っているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
4.他人が運転する車に休憩なしで1時間乗っている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
5.午後横になって休憩しているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
6.座って人と話しているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
7.昼食後静かに座っているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
8.自分で車を運転中に交通渋滞などで2~3分停車しているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
0~9点:問題なし
10~24点:過眠の可能性が強い
得点が高いほど眠気が強いことになります
過眠症の病態は様々ですが、大きく分け以下の2つの種類があります。
ナルコレプシー
ナルコレプシーは居眠り病とも言われる代表的な過眠症です。日本人の約600人に一人がかかっているとされていますが、実際に治療を受けている人は少なく、また専門医が少ないことから罹患者に対する正しい診断・治療が受けられないことや、まわりの人間からの理解が得られにくいなど、罹患者には大きな負担がかかっているのが現状です。
ナルコレプシーの中核症状には、日中耐えがたい眠気のために短時間の居眠りを反復することと、情動脱力発作(笑いや得意、興奮、怒り、驚きなど強い感情の動きをきっかけに筋緊張が突然喪失する)があります。また、金縛りや入眠時に悪夢などの幻覚を伴うことが多いです。
また、ナルコレプシーの疾患者には肥満や糖尿病の頻度も高くなります。
治療としては、
- 規則正しい生活習慣を保ち、良質の夜間睡眠を確保する
- 日中の眠気に対しては、精神刺激薬を朝や昼に用いる
- 情動脱力発作や入眠時の幻覚に対しては抗うつ薬
が効果的です。
特発性過眠症
特発性過眠症とは、日中の過度の眠気が主症状で、昼寝をすると典型的には1~数時間継続し、内容はノンレム睡眠です。昼寝中に起こそうとしてもなかなか目覚めず、起きたときの爽快感がありません。
夜間の睡眠時間は質・量ともに正常かつ、睡眠ポリグラフ検査での異常はありません。有病率はナルコレプシーの10%程度と見積もられています。
典型例
- 一日の睡眠時間の合計は10時間を越える
- 過眠のほかに頭痛、立ちくらみ、四肢の冷感など自律神経系の機能不全を示唆する随伴症状が多く合併する
そのほかにも、うつ病や総合失調症といった精神疾患に随伴して表れたり、睡眠時無呼吸症候群などの夜間睡眠障害によって生じる過眠もあります。